まえがき


 近年の科学技術の高度化や情報化の進展は、人々に恩恵をもたらす反面、人間関係の希薄化や日常生活における体を動かす機会の減少など、心身両面にわたる健康上の問題を生み出してきています。そうした中でスポーツが心身ともに健康な生活を過ごすうえで不可欠なものであるという認識が人々に広く根付くとともに,その重要性がますます高まってきています。
 平成9年9月に公表された保健体育審議会答申「生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について」では,障害のある人を含めたすべての人が身近な地域において,スポーツに気軽に親しむことができる環境を整備し,日常生活の中でスポーツライフを楽しむことができる「生涯スポーツ社会」の実現を提言しています。
このように体育・スポーツを健康の保持増進や体力の向上ばかりでなく,明るく豊かな生活を営むための「生きがい」や「文化」の一つとして生活の中に取り入れようとする気運が一段と高まってきています。本研究で取り上げた「生涯体育」は,障害のあるなしにかかわらず,だれもが生涯の各時期にわたって,それぞれの体力や年齢に応じて,いつでも,どこでも,体育・スポーツに親しむことのできるような豊かなスポーツライフの実現を目指すものです。
生涯体育の追究が21世紀を心豊かにたくましく生きる児童生徒の育成につながることはむろん、障害のある人の社会参加・自立への支援、QOL(生活の質)向上の一助となると考えています。
 本報告書は,障害児の体力特性からみた体育の指導内容・方法を吟味しながら,体育の学習システムの試案を作成することにより,生涯体育を指向した体育指導の在り方をまとめたものです。
 本報告書が学校教育にかかわる多くの方々に活用され,障害のある人に対する理解を一層深め,障害のある人の自立支援に寄与するとともに,特殊教育に携わっておられる方々の参考書としてお役に立てば幸いに存じます。
 今後,この研究をさらに深化させるために,多くの方から忌憚のないご意見をいただきたいと存じます。

平成11年 3月  

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