平 成 18 年 度
本研究会では愛知県高等学校数学研究会と共同で,参加を希望した県内の高等学校の新入学生徒を対象にした学力調査及び在学生徒を対象にした学力検査を毎年実施し,結果の集計・分析・考察を行っている。この研究は本年度分についてまとめたものである。
(1) 平成18年度高等学校入学者数学学力調査(テストA,テストB,テストT)
(2) 平成17年度高等学校数学標準学力検査(数学T基本,数学T+A,数学U)
<掲載資料>調査及び検査の問題,平均点,標準偏差,問題別正答率・無答率,主な誤答など
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<検索用キ−ワ−ド>
数学 中学校 高等学校 学力調査 数学T 数学U 正答率 誤答分析
1 調査の趣旨
当総合教育センターでは愛知県高等学校数学研究会と共同で,昭和30年以来,高等学校入学者数学学力調査を実施してきた。調査結果を分析・考察し,指導上の留意点を明らかにして,中高連携の立場からそれぞれの数学教育に有用な資料を提供することが目的である。また,本調査を継続して実施することにより新入学生徒の学力傾向の推移をつかむことができ,指導の参考とすることができる。
なお,過去のデータは,昭和49年度からは愛知県総合教育センター研究紀要別冊に掲載している。
2 調査の実施及び処理
(1) 調査問題の構成
調査問題をテストA,テストB,テストTの3種類に分け,各々について次の立場で問題を作成した。調査時間はいずれも50分である。
| テストA |
中学校学習指導要領に示された内容を出題基準とし,高等学校で数学を学習するのに必要と思われる基礎的・基本的な事項により問題を構成した。 |
| テストB |
問題構成の立場はテストAと同様であるが,より高度な思考力,洞察力を要する問題を中心に構成した。 |
| テストT |
問題構成の立場はテストAと同様であるが,極めて基本的な事項により問題を構成した。 |
(2) 調査の対象
県内の高等学校及び盲・聾・養護学校の高等部に,今年度入学した生徒を対象に調査を実施した。受検校(課程別資料提供校)の数はテストAが26校,テストBが116校,テストTが9校であった。
(3) 調査の実施時期及び資料の回収
学校ごとに3月下旬から4月中旬の間に調査を実施し,集計用紙(各標本の解答をそのまま一覧表に転記したものと受検者全員の度数分布)を4月20日までに回収した。
(4) 標本の抽出
テストAでは182人(抽出率5.6%),テストBでは1,405人(抽出率5.1%),テストTでは107人(抽出率16.9%)を抽出して,問題別の正答率・無答率を算出し,主な誤答について分析した。(テスト全体の平均点及び標準偏差は受検者全員を対象にして算出した)
なお,後出のテストA,Bにおける「上位群」,「下位群」は,それぞれ得点が「平均点+標準偏差」付近,「平均点−標準偏差」付近の各1割で形成される標本群である。
3 調査結果の概要
(1) 受検者数・平均点・標準偏差(過去との比較) 表1
テスト
項目
年度 |
テストA |
テストB |
テストT |
| 平均 |
SD |
受検者数 |
平均 |
SD |
受検者数 |
平均 |
SD |
受検者数 |
| 平成16年度 |
53.2 |
26.3 |
3,792 |
62.5 |
22.2 |
28,943 |
50.9 |
26.1 |
948 |
| 17 |
53.2 |
22.0 |
3,145 |
58.5 |
24.7 |
27,464 |
45.7 |
26.2 |
654 |
| 18 |
44.4 |
23.7 |
3,227 |
56.2 |
21.9 |
27,498 |
50.2 |
26.3 |
632 |
|
(2) 頻数分布(%) 表2
得 点
|
90〜
100 |
80〜
89 |
70〜
79 |
60〜
69 |
50〜
59 |
40〜
49 |
30〜
39 |
20〜
29 |
10〜
19 |
0〜9
|
| テストA |
2.7 |
5.7 |
8.7 |
11.3 |
12.7 |
13.7 |
14.6 |
13.6 |
10.8 |
6.2 |
| テストB |
5.4 |
11.0 |
14.1 |
16.2 |
15.1 |
13.8 |
11.3 |
7.9 |
4.0 |
1.1 |
| テストT |
7.0 |
9.5 |
11.2 |
12.5 |
11.1 |
11.2 |
12.0 |
9.8 |
9.0 |
6.6 |
|
(3) 学校(課程)別平均点分布(校) 表3
| 平均点 |
90〜 95 |
85〜90 |
80〜 85 |
75〜80 |
70〜 75 |
65〜 70 |
60〜 65 |
55〜 60 |
50〜 55 |
45〜 50 |
40〜 45 |
35〜 40 |
30〜 35 |
25〜 30 |
20〜 25 |
〜 20 |
計 |
テスト
A |
|
|
|
|
1 |
1 |
2 |
2 |
2 |
4 |
5 |
2 |
3 |
1 |
2 |
1 |
26 |
テスト
B |
|
2 |
4 |
4 |
10 |
12 |
9 |
11 |
12 |
10 |
12 |
14 |
8 |
6 |
1 |
1 |
116 |
テスト
T |
|
|
1 |
|
|
|
1 |
1 |
1 |
3 |
|
1 |
1 |
|
|
|
9 |
|
4 分析結果の概要
ア 概念や用語を定着させるには,自分の言葉で表現させる指導を心掛ける必要がある。
テスト A で,直線の「傾き」を問う問題に対して「方程式」を答えてしまった誤答が約9%ある。問題を正確に読み取ることは,正解を得るための大前提となるが,単純な読み違えとともに,問われる頻度が低い用語の未定着が一因であると考えられる。数学的概念を正しくとらえたり,表現したりするのに必要な用語が定着していないことは,指導上で留意する必要がある。生徒の実態を的確に把握するために,概念や用語の理解を確認する発問を増やすとともに,数学的な内容を自分の言葉で表現させる場面を多く設定するなど,授業中のコミュニケーションを豊かにすることが大切である。
イ 生徒がもつ言語感覚を踏まえ,適切な指導場面や指導内容を工夫する必要がある。
テストA で,問題の図表を見れば分かる語句の「行」と「列」とを取り違えた誤答が17%もある。このことは,単なる勘違いだけでは説明が付きにくく,生徒が日常的な用語に対してもっている語感に影響されたことが考えられる。日常的な言葉を用いて数学を説明する際には,そのような齟齬(そご)が生ずることがあるので注意する必要がある。また,テストB で文章を数式化する場合に,「もとの数の2倍の2乗」を2x2と表記した誤答が約12%あるなど,生徒が誤りやすい言葉や表現,記述は少なくない。このような点に留意して,適切な指導場面や指導内容を工夫する必要がある。
ウ 生徒が公式偏重の数学観をつくり上げてしまわないよう,考え方の原点を重視して指導したい。
場合を数えることに関して,パターン化されている典型的な問題を解くことは得意であるが,もれなく重複なく数えあげるための基本的な手だてが身に付いているとは言えない。このことは,高等学校入学段階でも,1年間の学習後でも変わりなく,9通りを数えあげる問題の正答率が5割程度以下にとどまっている。また,「少なくとも」の意味やその定型的処理法が正確に理解されていないため,正しく運用できない生徒が約5%いる。忘れやすい公式・定式化に依存する解法だけでなく,考え方の原点を定着させる指導を重視する必要がある。
エ 授業にコンピュータや模型などを用いて,印象付ける工夫をしたい。
検査「数学T+A」において,二次関数の「値域」を問う場合には,同一関数に対して「最大」を問う場合より正答率がかなり低い。生徒にとって難しい概念である関数やそのグラフの理解は,作業的な活動体験を通して深まると考えられる。しかし,授業内での時間確保が難しい場合には,コンピュータが有効な場合もある。最近は,使いやすい機能を備えた作図ツールや関数グラフ作成ツールが,フリーソフトとして利用可能であり,活用事例もウェブサイトに豊富に掲載されている。すなわち,インターネットとプロジェクターが利用可能な環境であれば,教材作成に要する各教員の負担は軽くなっているため,授業での活用を進めることが望ましい。
また,立体図形の理解を深めるには,平面的に図示することでは限界がある。最終的には,図から立体をイメージさせたいが,実物模型の観察から始めて印象深くすることが有効である。