「総合的な学習の時間の実施に向けて」

愛知県総合教育センター 石黒 茂

1 総合的な学習の時間のねらいの再確認
(1) 総合的な学習の時間創設のねらい(教育課程審議会答申(平成12年12月4日))より
ア 知識と生活との結び付き、知の総合化の視点を重視し、各教科等で得た知識・技能等が生活において生かされ、総合的に働くようにすることを目指している。
イ 単に知識を覚え込むのではなく、児童生徒が実感を伴って基礎的・基本的な内容を自らのものとして確実に習得し理解を深め、その後の学習や将来の生活に生きて働くようにすることを目指している。
ウ 中学校・高等学校においては、生徒が選択して学習できる幅を従来以上に拡大し、生徒の興味・関心、進路希望等に応じて、より深く高度に学ぶことができるようにしており、基礎・基本の確実な習得とあいまって、学ぶことの楽しさを味わわせ、学ぶ意欲や知的好奇心・探究心などを高めることとしている。

(2) 総合的な学習の時間創設のもつ機能
  総合的な学習の時間については、まず活動ありきではなく、学校の置かれている実態、教育上の課題を把握し、理念や方針をもって、学校経営全体の中で取り組む必要がある。自分の学校の教育課程はこうだと言える基本方針があって、それに基づき、生徒のためにどんな学習活動をするのか考えるべきである。 また、総合的な学習の時間と各教科・科目や特別活動とを関連させて、まとまりのあるカリキュラム(教育課程)にしなければならない。
  そうすることにより、各学校がカリキュラム(教育課程)の企画開発力を付けるようになることが、総合的な学習の時間創設のもつ大きな機能である。
  ただし、カリキュラム(教育課程)改革だけでなく、学校改革と教師の意識改革をセットにして取り組み、情報を公開して、保護者の評価を仰ぐようにしていかなければならない。

(3) 高等学校の総合的な学習の時間
  高校生の学習への動機付けが難しくなっている現状を考えると、総合的な学習の時間を通して、学習への意欲付けを行う必要がある。学習意欲がわくことにより、結果として高校生の勉強時間が増えるようにしたい。

2 教育課程上の位置付け

高等学校の教育課程は「教科・科目」「特別活動」及び「総合的な学習の時間」によって編成する。(学教法施行規則第57条)

  卒業までに生徒に履修させる単位数等の合計の中には、総合的な学習の時間の単位数を含んでいなければならない(高等学校学習指導要領第1章第2款の1)ので、生徒は必ず総合的な学習の時間における学習活動を行わなければならない。(卒業の要件)

3 総合的な学習の時間の学習活動
  各学校の実態等に応じて、生徒に育てたい力を明確にした上、教科・科目や特別活動と役割を区別し、分担し合い、相互補完し合うよう、総合的な学習の時間の学習活動を計画すること。
  総合的な学習の時間については、各教科等で身に付けた知識や技能を相互に関連付け、総合的に働くようにすることが重要である。学校で学ぶ知識を実感をもって理解する機会を学校の教育活動の中に意図的・計画的に設けることにより各教科等で学ぶ知識や技能を体験的活動の中で実感をもって理解し、実生活の中で総合的に働くようにする必要がある。

 ◎ 学習活動展開例
  @ 総合(教科)型 A 教科・横断型  B 講座型(ゼミ方式) C 共通テーマ型
 D トピック型  E 課題研究型  F 進路学習型


4 総合的な学習の時間の評価
  単位の修得の認否は行うものの、数値的な評定を行うことは適当でない。
  評価の方法としては、例えば、レポート、論文、作品などの製作物、発表や討論の様子などから評価したり、生徒の自己評価や相互評価を活用したり、活動の状況を教師が観察して評価するなど、学習に対する意欲や態度、思考力、判断力、表現力、活動の過程で進歩した点などを適切かつ総合的に評価する。

5 「指導要録改善等の通知(平成13年4月27日付)」では
  高等学校生徒指導要録に記載する総合的な学習の時間の記録としては、
(1) 学習活動
  総合的な学習の時間において行った学習活動を記入する。
(2) 評価
  各学校が定めた総合的な学習の時間の目標、内容に基づいて各学校が設定した評価の観点を踏まえて、生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入するなど、生徒にどのような力が身に付いたかを文章で記述する。
  観点については、高等学校学習指導要領に示された総合的な学習の時間のねらいなどを踏まえ、各学校において具体的に定めた目標、内容に基づき定める。

6 指導計画作成に向けて(愛知県立安城南高等学校の例)

ア 準備委員会の発足 @数名からなる校内準備委員会を設置
 構成員は分掌や学年、若手からベテランまで選んだ方が、全体を見渡した案を作成できる。
A準備委員会で現状分析・目標の設定等の原案の作成を行う。
イ 自校の教育課題の
  明確化
@「地域の期待・生徒の現状(やるべきこと)、教師の思い(やりたいこと)、高校の現状(今やれること)」の把握
A自校の教育課題の明確化
B「どんな生徒を育てるためにどういう教育を実現するか」を明確にする。
ウ 共通理解  職員会議・教科会等を通して、全教員の共通理解を十分図る。
エ 具体的な学習の
  内容と計画を決定
○具体的な学習の内容の決定
 指導目標(イB)に合致しているかを基準に、カリキュラム編成や内容、細案について検討する。
オ 学校全体としての
  指導体制づくり
@具体的な学習内容に、ふさわしい指導組織と在り方を考える。
A評価の方法、在り方(いつ、何を、どのような方法で)を考える。
カ 保護者、地域及び
  協力者への説明
○説明会を開催したり、協力者を訪問したりして、説明する。

7 教科との関連
(1) 学習意欲付け(興味・関心・意欲・態度)
  学びへの興味・関心をもたせるような活動を通して、教科・科目の学習への意欲付けを行う。
(2) 知識の定着(知識・技能)
  各教科等で学んだ知識や技能を課題学習(問題解決的活動)や体験的活動の中で実感をもって理解させ、定着させるようにする。
(3) 発展・応用(思考・判断・応用)
  各教科・科目で学習した内容を、生徒自身が更に深化させる(追究する)形で学習を展開する。
(4) 知識の総合化(応用・総合)
  各教科等で身に付けた知識や技能を相互に関連付け、総合的に働くようにする。
  「正解の見えにくい」課題に遭遇したとき、課題解決に当れる能力を育てる。

  * 総合的な学習の時間で身に付けた力(思考力、判断力、表現力等)を教科・科目の時間で深めることも重要である。
 
8 今後の課題
(1) 生徒の現状→学びの意味が分からず、学びへの興味・関心が低下している現実をどう打破するか。
(2) 職員の現状→「不要」「不安」「負担」をどう克服するか。
(3) 学校の現状→自校の教育活動について、説明責任が果たせるか。