高等学校における「総合的な学習の時間」の評価について

 平成11年3月に告示された学習指導要領は、平成12年4月から移行措置が始まり、平成15年度から学年進行で実施されることになっている。新学習指導要領で創設された「総合的な学習の時間」は、平成12年4月からの移行措置で実施が始まっており、愛知県においても、14校の高等学校が実施している。しかし、評価の在り方については、まだ研究が進んでいないのが現状である。本年6月、文部科学省が行った総合的な学習の時間の実施調査(都道府県及び政令指定都市への調査)の結果でも、実施上の課題として、「評価の在り方」を挙げている学校が多い。(注:1位は「予算措置」、2位は「評価の在り方」、3位は「趣旨の徹底(全教職員の共通理解を含む)」)
 そこで、各学校での準備・実践の一助となればと考え、愛知県総合教育センター「県立学校『総合的な学習の時間』に関する研究」において取り組んでいる研究の一端を紹介する。

1 総合的な学習の時間の評価
(1) 教育課程審議会の答申では
(2) 総合的な学習の時間における評価の在り方
 ア 「生きる力」の評価
 イ 指導のための評価
 ウ 肯定的な評価
 エ まとめ
2  生徒指導要録への記載
(1) 学習活動
(2) 評価
3  評価計画の作成
(1) 年間指導計画と評価計画の作成
(2) 評価の時期
4 評価の手順
(1)  評価の観点の設定について
(2) 評価項目(評価規準)の設定
(3) 評価方法、評価場面の決定
(4) 学年末における評価
(5) 通信簿への記載(学期ごとの評価)
5 評価活動における工夫、配慮    
(1) 「関心・意欲・態度」の評価
 ア 観察による評価
 イ 作品による評価
 ウ 自由記述による評価
(2) 「思考・判断」の評価
(3) 「自己評価」
(4) 学習理論の利用
 ア 評価項目設定での利用
 イ 個人内評価での利用
参考資料1 「評価項目(評価規準)の例」
参考資料2 「総合的な学習の時間の学習活動展開例」



1 総合的な学習の時間の評価
 (1) 教育課程審議会の答申では
 総合的な学習の時間の評価について、学習指導要領には示されていない。しかし、平成10年7月の教育課程審議会答申では、「数値的な評価はせず、学習成果だけでなく、学習状況を含め、適切に評価すること」「生徒のよい点や可能性、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを、積極的にとらえて評価すること」が求められている。

 この時間の趣旨、ねらい等の特質が生かされるよう、教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず、活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて、児童生徒のよい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを踏まえて適切に評価することとし、例えば指導要録の記載においては、評定は行わず、所見等を記述することが適当であると考える。 (教育課程審議会答申(平成10年7月29日)より)

 その後、平成12年12月に、教育課程審議会から「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」が答申され、指導要録の取扱いや指導要録の参考様式が示された。高等学校生徒指導要録には「総合的な学習の時間」の欄が新設され、「学習活動」と「評価」から構成されている。今回、教育課程審議会としては、はじめて評価という個別の課題について審議され、評価に当たっては「各学校において指導の目標や内容に基づいて定められた観点を踏まえて行うこととすることが適当である」とされている。



 (2) 総合的な学習の時間における評価の在り方
 ア 「生きる力」の評価
 総合的な学習の時間のねらいは、@「資質や能力として、自ら課題を見付け、自ら学び自ら考え、問題を解決する力などを育てること」A「学び方やものの考え方や問題解決に向けての主体的、創造的な態度を育てること」B「自己の在り方生き方について考えることができるようにすること」である。簡潔に言うと「生きる力」の育成である。そこで、総合的な学習の時間の評価は、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力など含めた「生きる力」が育成されているかどうかによって行う必要がある。しかし、「生きる力」は短時間で、急に身に付くような力ではなく、長い時間かかって徐々に伸びていくものである。そのため、長期的な展望に立ち、「どの段階で、生徒にどういう力を育てるべきか」を明確にし、各学年での指導目標や内容を具体的に決め、それに基づいて定めた観点を踏まえた評価(目標に準拠した評価)をしなければならない。このような評価は、生徒の学習の成果について、単位の修得を認定するかどうかを決める上でも重要となってくる。したがって、年間指導計画作成の段階から、どのような場面でどういった力をどんな方法で評価するかなどを計画しておくことが大切である。

 イ 指導のための評価
 学習の評価には、学習の終了時に行う「学習後の評価」と、学習の途中で行う「学習過程での評価」とがある。「学習後の評価」は、どんな力が身に付いたかなど、学習の成果をみるために行う総括的評価であり、「学習過程での評価」は、学習のねらいを達成するために行う評価である。「学習過程での評価」により、生徒は学習過程での自分の計画や活動の方向を修正することができ、教師は指導・支援の在り方を修正することができる。
特に、総合的な学習の時間は、主体的に問題を解決する学習なので、生徒が学習の過程においてどのような活動を行っており、次の学習にどのように進もうとしているのかを指導者が的確に把握し、適切な指導を行い、学習の方向を修正したり助言をしたりする必要がある。総合的な学習の時間の評価は、「学習後の評価」も大切であるが、「学習過程での評価」が大きな意味合いをもってくる。

 ウ 肯定的な評価
 総合的な学習の時間では、生徒一人一人が「生きる力」をはぐくみ、成長することを目的としている。そのため、数値的に評価をせず、「生徒のよい点や可能性、学習に対する意欲や態度、進歩の状況など、学習の状況や成果などを、積極的にとらえて行う評価」、言い換えれば、「生徒一人一人を他者と比較することなく、時系列的な成長を評価すること(個人内評価)」が求められている。それには、生徒の学習活動を適切な期間ごとに評価し、生徒の進歩が分かるような記録を残しておく必要がある。
 そして、生徒一人一人の成長をサポートする(自己実現を援助する)ために、生徒一人一人の将来への可能性を信じ、生徒のわずかな進歩でも認め、激励し、期待を掛けることができるような「積極的な評価」「肯定的な評価」を行いたい。こういった評価により、生徒は「教師の積極的ないし肯定的期待にしたがい、自ら向上し、よりよい結果をもたらす」(ピグマリオン効果)ことができる。

 エ まとめ
 「指導目標や内容に基づいて定めた観点を踏まえた評価(目標に準拠した評価)」は絶対的な規準に基づいて生徒の到達度を評価するものである。一方、「生徒一人一人の時系列的な成長の評価(個人内評価)」には、絶対的な規準はなく、生徒一人一人の成長を評価するものである。両者は、本質的に目的が異なる評価である。総合的な学習の時間では、この二つの異なる評価法を同時に用い、目標に準拠した評価で学習内容や活動のもつ意味を明らかにし、総合的な学習の時間での学習活動を一層有効なものとしつつ、個人内評価により、生徒一人一人の成長をサポートしていく必要がある。
 総合的な学習の時間の評価は、学習のねらいを達成するために、指導目標や内容に基づいて定めた観点を踏まえた評価(目標に準拠した評価)、学習過程での評価(形成的評価)を重視しつつ、生徒一人一人の成長をサポートするために、時系列的な成長の評価(個人内評価)、肯定的な評価も行いたい。

ポイント
 1−1 「生きる力」が育成されているかどうかを評価すること(目標に準拠した評価)
 1−2 生徒に対して適切な指導を行うための「学習過程での評価」をより重視すること
     (形成的評価)
 1−3 生徒一人一人の時系列的な成長を評価すること(個人内評価)
 1−4 生徒一人一人の自己実現を援助するための評価をすること(肯定的な評価)



2 生徒指導要録への記載
 平成12年12月に教育課程審議会から出された答申を受け、文部科学省から「指導要録改善等の通知(平成13年4月27日付)」が出され、高等学校生徒指導要録に記載する事項が示された。そこでは、「指導の記録」として「総合的な学習の時間の記録」を以下のように記載することとなっている。その場合、当然のことであるが、生徒指導要録に記載された事項がもつ「指導目的」「証明目的」としての機能に留意する必要がある。このことから考えれば、総合的な学習の時間について、生徒指導要録にどの程度のことを記入するかは決まってくる。
 また、総合的な学習の時間では外部の協力を得ながら、学習活動を行う場面が増えてくる。複数の人間が一人の生徒を評価することは、評価の客観性をより高める上においても大切なことであるので、外部の意見も適切に評価に取り入れることを工夫したい。しかし、生徒指導要録は、生徒の記録を原簿として学校に残すものなので、外部の評価を取り入れる場合は、最終的に学校として責任をもち評価しなければならない。いつ、どこで、誰が、どういう方法で評価をし、収集した評価のための資料を適切に活用し、最終的に誰がどう評価するかといったことを決めておくべきである。

「総合的な学習の時間の記録」(指導要録改善等の通知(平成13年4月27日付)より)
 1 学習活動
   総合的な学習の時間において行った学習活動を記入する。
 2 評価
   各学校が定めた総合的な学習の時間の目標、内容に基づいて各学校が設定した評価の観点を踏まえて、生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入するなど、生徒にどのような力が身に付いたかを文章で記述する。
  観点については、高等学校学習指導要領に示された総合的な学習の時間のねらいなどを踏まえ、各学校において具体的に定めた目標、内容に基づき定める。

  (1) 学習活動
 生徒指導要録は生徒個人の能力・適性、学習状況、行動状況等を継続的に記録し、指導に役立てるものでもある。学習活動を記入した教師以外の人が見ても、生徒がどのような学習活動を行ったかが分かるような記載をする必要がある。そのことから考えれば、例えば、学習活動について「国際理解」と記入する程度のことでは不適切である。ただし、学習活動のテーマでどういう活動をしたかが分かるようなものであれば、テーマを記載するのもよいだろう。

  (2) 評価
 総合的な学習の時間の記録は、各学校が定めた総合的な学習の時間の目標や内容に基づいて設定した評価の観点を踏まえて、
 @ 生徒の学習状況にみられた顕著な事項とその特徴
 A 生徒の学習活動の過程及び結果、身に付いた力、進歩の状況
など、生徒のプラス面を積極的にとらえて、文章で記述するという考え方に立っている。生徒一人一人の成長をサポートし、自己実現に役立つ文章で記述するよう心掛けたい。

ポイント
 2−1 学校外の人の評価も取り入れることを工夫する。
 2−2 学校として責任をもって評価を行える体制を、各学校で確立しておく。
 2−3 生徒指導要録にどの程度のことを記入するかは、指導要録がもつ「指導目的」「証明目的」としての機能から考える。
 2−4 生徒指導要録の評価欄には、生徒一人一人の成長をサポートし、自己実現に役立つような文章で記載する。



3 評価計画の作成
 (1) 年間指導計画と評価計画の作成
「生きる力」を評価し、指導のために役立つ評価を行うには、学習活動が終わってから評価を行うのではなく、年間指導計画作成の段階で、評価計画を作成しておく必要がある。
評価計画を作成し、誰が、いつ、どんな方法で、何を評価をするのかを決めておけば、何のために、この学習活動を行うかが一層明確化される。指導する教師には年間指導計画や具体的な学習内容・活動のもつ意味が理解されやすくなり、生徒の指導や評価も容易になる。生徒には、評価項目(評価規準)や評価時期を前もって示しておくと、学習内容・活動のもつ意味が理解されやすくなり、総合的な学習の時間での活動も一層有効なものとなる。また、学習活動に入るときに行うオリエンテーションで、この学習活動で自分なりに身に付けたいこと、学びたいことを決めさせておくと、学習活動が一層有意義に展開できるものと考えられる。学習への目的意識、学習意欲、達成感などを高めることが、評価計画のもつ機能と言える。
 年間指導計画を作成するときには、学習指導要領に記された総合的な学習の時間のねらい、各学校の教育目標、生徒の実態等から、「どういう力を育てるか(育てたいか)」を明確にし、それを基に指導の目標(ねらい)を重点化して、具体的に設定しておくと、評価項目(評価規準)が設定しやすくなる。



 (2)  評価の時期
 学年末に総合的な学習の時間の評価を行うには、1年間の生徒の学習活動を記録しておくことが必要である。そのため、適切な期間ごとに評価をし、記録しておく必要がある。生徒自身も学習活動を振り返り、自分の成長を知り、次の学習に生かすことができる記録を残す工夫が大事である。
 @ 一人の生徒が1年間を掛けて一つの学習活動を行う場合は、適切な期間の長さ、活動内容のまとまりごとに分割し、評価を行い、評価の記録を最終的にまとめるのが適切であろう。評価を行う期間は、長すぎると適切な評価ができなくなる可能性がある。逆に、毎時間評価を行っても、あまり短すぎて適切な資料が集まらない可能性もあり、評価にばかり気を取られてしまうことになる可能性もある。
 A 一人の生徒が1年間に複数のテーマの学習活動を行い、一つの学習活動の長さが10時間程度の場合は、各学習活動ごとに評価し、記録を蓄積しておき、学年末に最終的にまとめるのが適切であろう。一つの学習活動があまり長くなるようであれば、分割して評価を行い、一つの学習活動の評価としてまとめておくとよい。

ポイント
 3−1 年間指導計画作成の段階で、評価計画を作成しておく。
 3−2 指導の目標(ねらい)を具体的に設定しておくと、評価項目が設定しやすい。
 3−3 生徒に前もって、評価項目を示しておくと、学習活動の意味が理解されやすくなる。
 3−4 適切な期間ごとに評価をし、生徒の学習活動を記録しておく。
 3−5 生徒が自分の成長を知ることができるような記録の残し方をする。



4 評価の手順
 (1) 評価の観点の設定について
 総合的な学習の時間のねらい、各学校の定める指導目標(ねらい)、内容等に基づき、例えば、以下のように観点を設定する。
  @ 「総合的な学習の時間」のねらいを踏まえた例
    「課題設定の能力」「問題解決の能力」「学び方、ものの考え方」「学習への主体的、創造的な態度」「自己の生き方」
  A 教科における評価の観点との関連を明確にして設定した例
   「学習活動への関心・意欲・態度」「総合的な思考・判断」「学習活動にかかわる技能・表現」「知識を応用し総合する能力」
  B 各学校で定めた目標、内容に基づき、総合的な学習の時間のねらいを重点化した例
    「コミュニケーション能力」「情報活用能力」など
  C 学習過程に沿って設定した例
    「課題を発見する力」「計画する力」「課題を追究する力」「まとめる力」「発表する力」

 (2) 評価項目(評価規準)の設定
 総合的な学習の時間のねらい、指導の目標、内容や観点を踏まえて評価項目(評価規準)を設定する。評価項目(評価規準)の例としては、参考資料1のようなものが挙げられる。

 (3) 評価方法、評価場面の決定
 評価項目(評価規準)ごとに、誰が評価をするか、何によって評価をするか、いつ評価をする(評価場面)のが適当かを決定する。→参考資料2「総合的な学習の時間の学習活動展開例」参照
   ア 誰が評価するか
   ・教師による評価
   ・生徒相互による評価(他者評価、相互評価)
   ・自己評価
   ・外部講師等による評価

   イ 何によって評価をするか
   ・観察による評価
   ・作品による評価
   ・自由記述による評価
   ・面接による評価
   ・質問紙による評価

 (4) 学年末における評価
 学年末に評価をするためには、1年間の生徒の学習状況を適切な期間ごとに評価をし、資料や記録を残しておく必要がある。特に、1年間の学習活動を、一人の生徒に対して複数の指導者が指導する場合は、評価の拠り所がなく、最終的に評価をする教師が困ることになるだろう。
 そのためには、それぞれで行った評価を記録する用紙を作っておき、「生徒の学習状況にみられた顕著な事項とその特徴」「生徒の学習活動の過程及び結果、身に付いた力、進歩した点」など、生徒のプラス面を蓄積しておくとよい。→参考資料2「総合的な学習の時間の学習活動展開例」参照
 そして、最終的に、評価の責任者は、特に顕著にみられた生徒のプラス面を、自己実現に役立つように、具体的かつ簡潔な文章で記述したい。
 学年末にスムーズに生徒の学習状況を評価するためにも、適切な期間ごとの各生徒の活動状況の評価、活動内容等の記録を集め、保存する方法を各学校で確立しておきたい。

 (5) 通信簿への記載(学期ごとの評価)
 通信簿は、生徒指導要録とは異なり、その形式・内容・記入の仕方等は法的に規定されているわけではないが、学校が家庭と連絡をとり、生徒の学校生活の状況を知らせるためのものである。そこで、総合的な学習の時間の学習状況についても、学年末には1年間の学習活動と学年末の評価、単位が認定されたかどうか等を知らせる必要がある。したがって、学校が家庭と連絡をとり、生徒の指導に役立てるという意味から、できるだけ、学期ごとに学習内容、活動状況の評価を家庭に知らせたい。そのため、総合的な学習の時間を、ある特定の学期又は期間に実施している場合は難しいが、1年間を通して、実施している場合は、学年末だけでなく、学期ごとに評価をまとめるようにしておく必要がある。生徒一人一人の成長を評価し、サポートしていく通信簿の「指導目的」の機能を発揮するようにしたい。

ポイント
 4−1 評価の観点の設定→評価項目の設定→評価方法、評価場面の決定
 4−2 学年末に評価するために、適切な期間ごとの各生徒の活動状況の評価、活動内容等の記録を集め、保存する方法を確立しておく。
 4−3 生徒の学習内容、活動状況の評価は、学期ごとに家庭に知らせ、生徒の指導に役立てる。



5 評価活動における工夫、配慮
 評価活動では、学習過程や次の学習に生かす評価情報をどのような方法で収集し、これを資料化して活用することができるかが大切である。具体的な評価活動において工夫、配慮しなければならないこととして、次のようなことが考えられる。

 (1) 「関心・意欲・態度」の評価
 「関心・意欲・態度」は情意面にかかわる評価であるので、主観的にならざるを得ない面もある。しかし、複数の人の眼で評価したり、態度や行動、発言内容の観察による評価、作品の評価、自己評価や相互評価などの多様な評価方法を取り入れるなど、できるだけ主観的にならないようにしたい。

 ア 観察による評価
 学習活動に対する参加意欲や参加状況などを見取るために、活動の様子や表情、態度などを的確に観察することが大切である。例えば、「関心・意欲・態度」の現れを行動的傾向としてとらえてもよいだろう。「課題について興味をもち、関係する情報をできるだけ集めようとする」「自分にとって少し難しい課題に取り組んでみようとする」「自分にとって少し難しい課題に取り組むことにより、自分の能力を高めていこうとする」「最後まで粘り強く、自分の力で課題を解決しようとする」などが考えられる。「関心・意欲・態度」の現れを情動的傾向として、「学習活動を行ってよかったと感じる」「学習活動が楽しかったと思う」など充足感や満足感を感じているかということでみることもできる。

 イ 作品による評価
 一つの作品には、多くの場合その時間の活動の姿や思考の様子が投影されているものである。つまり、生徒なりの「学びの足跡」が作品に表現されていると考えることができる。したがって、作品の出来具合や報告量の多少、進行の遅速などだけでなく、作品に表現されている「学びの足跡」から、生徒の活動の姿(熱心さ、工夫、情報の収集の仕方など)を評価する必要がある。

 ウ 自由記述による評価
 「関心・意欲・態度」を知るために、チェックリストによる自己評価もあるが、自由記述による評価もある。これにより生徒の内面を表出させ、「関心・意欲・態度」の現れを教師が評価する。例えば、地域の人から話を聞き、それについて「分かったこと、自分の考え方、思ったこと」などを記述させる。これは、生徒の学習活動に対する興味、意識、感じ方などについて、一人一人の実態を把握するのに効果的である。この自由記述による評価は、日常的な観察や作品などと併せて全体としてとらえることも大切である。

 (2) 「思考・判断」の評価
高等学校生徒指導要録の「各教科の評価の観点及びその趣旨」にみられる「思考・判断」には次のようなものが示されている。

 「課題(問題)を見いだす」「基本的な知識を活用する」「実証的に考える」「論理的に考える」
 「分析的に考察する」「多面的・多角的に考察する」「総合的に考察する」「創意工夫する」
 「創造する」「状況を踏まえ公正に判断する」「事実に基づき科学的に判断する」

 これらを参考にすると、思考力については「既有の情報に基づいて推理する力」「既有の情報を新たな課題や一般的な具体的場面に活用する力」「情報を分析的あるいは流動的に扱える力」を評価する必要がある。ただし、思考力を評価しているつもりが、生徒の知識・理解を評価している場合もあるので、十分気を付けて評価する必要がある。
 判断力については、「情報を評価する力」と考えられる。総合的な学習の時間では、「自分の課題に必要な情報を自分の力で探し、選択・活用・処理する」それぞれの過程で情報の価値を判断することへの評価が大切である。



 (3) 「自己評価」 
 高校段階では、自己教育力の育成という観点から、質問紙に答えさせたり、自己評価カードを書かせたりして、自己評価させることも有効である。
 自己評価は、生徒の内面を知る手掛かりになるばかりでなく、生徒に自己を見つめさせる契機にもなる。次の学習に生かす学習成果の総括的評価を含め、学習過程での自分の計画や活動を、自分の力で評価し修正できる評価活動をさせることが大切である。生徒自身が課題を設定する場合には、自己の能力にあった課題設定ができたかどうかを生徒自身によって評価させることも大切である。
教師が生徒全員を見ることは難しいので、できるだけ生徒の自己評価と教師の評価とを併用したい。そして、生徒の自己評価の結果と教師の評価結果とを総合して、最終的に評価する。評価にずれがある場合は、生徒と面接し、ずれを是正するとよいだろう。これからの世の中では、自分の行動、活動を自分で適切に評価することが求められている。自分を理解するためには、自己評価を大切にしたい。
また、自分を相対化し、客観的に見る眼を養うことができるようにするためには、生徒同士の話合い、発表での感想など、同じ視線で見た「相互評価」を取り入れるなどの工夫が求められる。

 (4) 学習理論の利用
 ブルームらの説に基づき、情意的領域・認知的領域での学習水準を表1、表2のように設定した。
 「関心・意欲・態度」のような情意領域は「T受容」「U 反応」「V 価値づけ」「W 組織化」「X 個性化の実現」に分類される。最も低い「T 受容」から最も高い「X 個性化の実現」へと学習水準が上がり、「X 個性化の実現」が情意領域での最終の目標である。また、各内容の中では、a→b→cと学習水準が高いとされている。
 「思考・判断」のような認知領域は「T知識」「U 理解」「V 応用」「W 分析」「X 総合」「Y 評価」に分類される。最も低い「T知識」から最も高いへ「Y 評価」と学習水準が上がり、「Y 評価」が認知面での最終の目標である。各内容の中では、情意領域と同様、a→b→cと学習水準が高くなる。ただし、ここで言う「知識」「理解」は、私たちが日常的に使用しているものより、狭い意味で使っているので注意を要する。

 ア 評価項目設定での利用
 評価項目を設定する際、設定した評価項目が適切なものであるかどうかを、表1、表2を参考に判断するとよい。「関心・意欲・態度」に関する評価項目を設定する場合には、情意領域のT〜Xのどの学習水準を用いるか、生徒の実態に応じ参考にすることができる。また、学年ごとに、情意領域のT〜Xのどの学習水準を用いるか、生徒の発達段階に応じ参考にすることができる。
例えば、1年生では「積極的に〜について調べようとしているか」のようなUの学習水準、2年生では「〜する必要性を感じ、最後まで行う」のようなVの学習水準、3年生では「〜について、自ら判断し行動する」のようなWの学習水準からそれぞれ評価項目を選ぶようにすることもできる。
 「思考・判断」のような認知領域に関する評価項目を設定しようとする際も同様に参考にするとよい。

 イ 個人内評価での利用
 生徒一人一人の時系列的な成長を評価するときにも、表1、表2を参考にすれば、かなり客観的に評価することができる。
 「関心・意欲・態度」については、学習活動の過程における情意領域での学習水準の変化で評価する。例えば、最初は「学習活動にただ取り組んでいるだけであった」(U−a)ものが、最後には「学習活動を行ってよかったと思う」(U−c)」になっていれば、「関心・意欲・態度」が高まったと判断することができる。
 「思考・判断」のような認知領域についても、同様に参考にすることができる。



表1 情意面での学習水準の変化





表2 認知面での学習水準の変化





7 参考文献
 (1) B.S.ブルームら『教育評価法ハンドブック』第一法規,昭和48年
 (2) 日本教育方法学会編『学力の構造と教育評価のあり方』明治図書,昭和54年
 (3) 水越敏行・梶田叡一編『授業と評価ジャーナル 3集 情意領域の評価と指導』明治図書,昭和58年
 (4) 辰見敏夫『講座 現代公教育の論争点5 教育評価の争点』教育開発研究所,昭和59年
 (5) 渋谷憲一編著『シリーズ教育の間6 指導と評価の間 学習意欲を育てる教育指導』ぎょうせい,平成2年
 (6) 奥田真丈ら『新しい学力観と評価観 絶対評価の考え方』小学館,平成4年
 (7) 辰野千壽『学習評価基本ハンドブック−指導と評価の一体化を目指して−』図書文化,平成5年
 (8) 高野清純・田中公一編著『高等学校新指導要録の解説と実務』図書文化,平成6年
 (9) 北尾倫彦・古田茂樹『中学校 理科 観点別学習状況の評価基準表』図書文化,平成6年
 (10) 藤岡完治・北俊夫編『新学力観のための評価と指導 第T巻〜第V巻』ぎょうせい,平成9年
 (11) 文部省『高等学校学習指導要領』大蔵省印刷局,平成11年
 (12) 文部省『高等学校学習指導要領解説 総則編』東山書房,平成11年
 (13) 「悠」編集部編『「生きる力」の評価がわかる 速解 新指導要録・教課審答申』ぎょうせい,平成13年
 (14)熱海則夫ら編著『中学校生徒 新指導要録の解説と実務』図書文化,平成13年



参考資料1 「評価項目(評価規準)の例」

参考資料2 「総合的な学習の時間の学習活動展開例」