5 「総合的な学習の時間」実践編《2》−学習の展開−Q&A

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Q5−1 総合的な学習の時間における学習展開は?

 総合的な学習の時間のおおよその流れとして、次のような手順が考えられます。

  内  容 備  考
課題発見  身近な生活、自己の在り方生き方を分析し、課題をとらえる。  
課題設定  学習課題を設定する(個人・グループ)。  追究する価値のある課題を設定する。
追究目標設定  課題を分析し、追究の方向を定める。
 問題解決のための具体的な追究目標をつくる。
 
課題追究計画作成  追究計画を立てる。
 情報の集め方、調べ方、まとめ方の計画を立てる。
 生徒へのアドバイス。
課題追究学習  体験学習・フィールドワークを重視しながら学習を展開する(自然体験、社会体験、観察・実験、見学・調査、生産活動等)。  生徒相互の話し合い活動(中間報告や研究過程の検討等)を行い、互いに点検し、補足すべき点を確かめ合いながら、次の学習に生かす。
学習成果のまとめ  各自・各グループの学習の成果をまとめる。  効果的な報告・発表の仕方を工夫する。
学習成果の発表  各自・各グループの学習成果を発表する(ステージ発表、掲示による発表、冊子による発表等)。  全校・学年体制で参加することで、課題に対する意識をより高める。
発展課題の設定  学習成果を発展させるための課題を設定する。
 学年別、課題別等で研究の成果を冊子としてまとめる(次年度の課題設定の資料として活用)。
 学習の不十分な点や、もっと深めたい点を検討して次の課題につなげる。 

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Q5−2 総合的な学習の時間にふさわしい活動は?

(1)囲碁や将棋などを教えるような場合
 総合的な学習の時間を実施するに当たって、趣旨やねらいに沿った学習活動を展開する必要があり ます。単に、囲碁や将棋を教えるようなことで、総合的な学習の時間を実施したことにするのは適切 とは言えません。

(2)学習形態が個人研究の場合
 高等学校学習指導要領には、総合的な学習の時間の学習活動を行うに当たっては、以下のように配 慮すべき点が示されています。

 「グループ学習や個人研究などの多様な学習形態、地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となっ て指導に当たるなどの指導体制、地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて工夫すること。」

 このように、高等学校の総合的な学習の時間では、個人研究なども含めた多様な学習形態での学習 活動が望まれています。ただし、個人研究を行わせる場合でも、土曜日・日曜日や長期 休業中の課題 として済ませるのではなく、総合的な学習の時間の中で学習活動をさせなければなりません。

 また、最初から個人研究を行わせるよりも、段階的な指導を行った後、最終的な段階で個人研究を行 わせる方がよいでしょう。

(3)校外での調査・研究・体験学習などの場合
 総合的な学習の時間として校外で調査・研究・体験活動を行う場合も、原則として授業日に実施しな くてはいけません。

 校外での調査・研究・体験活動を行うための時間は、総合的な学習の時間の活動として、事前に計画 しておく必要があります。土曜日・日曜日や長期休業中の課題として済ませることはできません。

 総合的な学習の時間を一日行った場合、充てるべき授業時数については、その活動時間等を考慮して、 学校で適切に決めることが必要です(原則としては一日6時間分)。

(4)福祉についての学習活動をボランティア講座として、地域の社会福祉協議会に任せた場合
 総合的な学習の時間については、養護教諭、栄養職員、実習助手も含め、全職員が一体となって指導に当たるこ とが望ましいと考えます。また、地域の人材や施設・設備等の活用なども積極的に行っていくことが必 要です。ただし、学校は単位の修得を認定する必要があるので、養護教諭、栄養職員、実習助手、 地域の方々に一緒に加わってもらう場合でも、担当の教員を 決めておき、成果の認定が間違いなく行 われるようにしなければなりません。

 地域の社会福祉協議会が行うボランティア講座に生徒を参加させ、生徒を任せっぱなしにし、総合的 な学習の時間を行ったことにするのは適切ではありません。もちろん、単位も認定する ことはできま せん。総合的な学習の時間として学習活動を行うなら、学校で計画された時間の中で、授業日にボラ ンティア活動に参加させる必要があります。

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Q5−3 総合的な学習の時間の学習内容を深めるには?

○各学年の学習のねらいを設け、学習内容を関連付ける。
 総合的な学習の時間の設定には、ある学年で集中的に実施する方法やすべての学年で実施する方法な どが考えられます。ここでは、すべての学年で実施し、学年ごとに総合的な学習の時間のねらいに即し た学習内容を積み重ねていく一例を示します。

 高学年になるに従って、より高度な能力を身に付けさせ、学習の深化を図るためには、前の学年で身 に付けた知識・技術を次の学年で有効に生かすことができるように、各学年にふさわしい学習内容、学 習形態を検討することが大切です。

<学年ごとの学習のねらいの一例>
 1年生⇒教科横断的・総合的な学習の方法を習得し、グループ研究により学習課題を解決するためのス キルを培う。
 2年生⇒生徒一人一人の総合的な学習へと発展させ、個人研究により課題解決的、探究的な態度と能力 の育成を図る。
 3年生⇒より専門的な興味と関心に基づいた課題を設定し、個人研究により生徒の主体的な学習態度や 課題解決的、探究的な態度・能力を確立する。

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Q5−4 生徒の主体的学習活動を促す手だては?

 生徒が自ら学習課題を見出し、主体的にかかわるには、挑戦しやり抜こうとする自己の内面からの動機 付け、さらにはその動機や意欲を支える自己表現への夢や展望をもてることが肝要になります。生徒が 「自分もやればできる」という、自分自身の「よさ」への自覚を促し、自尊感情を刺激する活動を工夫す る必要があります。

(1)生徒が取り組みやすい課題設定
 例えば、比較的学習意欲の乏しい生徒が課題に取り組むに当たっては、手掛かりや感触のある課題の設 定ができるかどうかが鍵となります。そうした生徒が関心のあること、得意とすること、できそうなこと などの課題が選択できるように配慮する必要があります。

(2)教師の指導姿勢の転換
 総合的な学習の時間では「なにを教えるかではなく、どう学ばせるか」を重視しています。つまり、生徒 が課題に取り組むに当たって、直接的に指示を与えたり、手を出すのではなく、生徒が主体的に問題解決 の糸口を見いだすことができるように助言し、必要な援助をする姿勢で臨むことが大切です。

(3)生徒に成就感・達成感を感じさせる評価(成果の確認)
 一連の学習活動を遂行し、「できた、まとまった、分かった」という時、それが正しく評価されること によって、生徒は成就感や達成感を実感します。それが生徒の内的な動機付けとなり、次の学習活動に取 り組む意欲を高めることとなります。

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Q5−5 地域の教材の活用とは?

○地域の人材の活用
 今日的な課題(環境、国際理解、健康・福祉など)に関連する人物や郷土史家、専門的な知識や技能を もつ社会人などを講師として検討する。時には、講師が働く場で講義が行われるのもよいでしょう。ま た、一方的な講義ではなく、生徒と講師が意見を交換できるような設定も大切です。さらには、地域の 歴史や産業などの学習方法として、住民への聞き取りやアンケートなどを通じ、調査・研究を行うこと も考えられます。

○地域の施設・設備、事業所、自然の活用
 地域の公民館、博物館、郷土資料館、神社・仏閣、警察署、郵便局、事業所(銀行、店舗、製造工場 など)の諸施設を、職業体験やものづくり、ボランティア活動、調査・研究の資料収集の場として活用 します。また、地域の自然の調査・研究を通して、自然体験させることも大切です。

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Q5−6 地域の教材や学習環境の積極的な活用における留意点は?

(1)地域状況の把握
 学校として地域で活用可能な人材や施設・設備、自然を把握しておくことが大切です。そのために準 備の段階で十分に調査し、人材バンクや施設マップといったものを作成するとよいでしょう。

(2)地域からの理解
地域の人々に学校の教育方針を十分に納得してもらう必要があります。PTAを通じた説明会や個々の 社会人講師や施設責任者への説明を十分に行いたいものです。

(3)学習の系統性
 校外での学習内容と校内での授業や行事とを有機的に関連させることが大切です。校外学習だけが遊離 しては、学習に系統性がなくなり、生徒の興味・関心が一過性のものとなってしまいます。

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Q5−7 国際理解、情報、環境、福祉などの現代的課題を扱う際の留意点は?

○直接体験が求められる学習活動
 実際に外国人とコミュニケーションをとること、コンピュータを使うこと、リサイクルや介護にか かわることなどの実体験は、学びの重要な要素です。直接体験だけでよいということではありません が、体験なしに現代的課題の学習は成立しにくいと考えます。

○価値判断にかかわる学習活動
 環境について学べば、豊かさと環境保護のどちらを優先するかという問題に突き当たるでしょう。 福祉について学べば、よりよく生きるために何が重要かが考えられるでしょう。国際理解や情報の 学習においても、世界はどのように変化していくべきで、その中で自分はどう生きるのかという問 題に生徒たちは直面するでしょう。このように、現代的課題の学習においては、価値判断にかかわる ことが不可避となると考えます。

○あらかじめ決まった「正解」はない学習活動
 現代的課題には絶対的な「正解」はあり得ません。環境問題や高齢化社会への対応について、私た ちの社会はまだどうすることが正しいのかを決められずにいます。国際理解や情報化社会への対応に おいても、唯一絶対的な結論などないのです。多様な解決法を工夫することそのものが重視されます。

○追究のエネルギーを持続・発展させていく学習活動
 生徒自身あるいは生徒同士の葛藤や対立を通して、問題解決のための視点を広げ、課題追究へのエネ ルギーを持続・発展させていくよう支援することが大切です。

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Q5−8 家庭・地域社会との連携のポイントは?

○総合的な学習の時間で生徒に多様な学習体験活動をさせるには、家庭・地域社会との連携・協力関係 を築くことが必要です。まず地域の行政機関との連携を図りましょう。公共の施設を利用したり、ボラ ンティアを探す手掛かりを得たり、緊急時に備えたりなど、市町村との連絡を密にしましょう。

○家庭・地域社会とのコミュニケーションを活発にしましょう。今までにない活動を始めるわけです から、家庭・地域社会の人々に学校の教育目標や、総合的な学習の時間の目的・意義を伝え、自分た ちの学校がどんな生徒を育てたいのか、生徒に何を学習させたいのかを明確に伝えましょう。

○開かれた学校として生徒のありのままを見てもらえる機会をもちましょう。また、ホームページの 開設、町の掲示板・回覧板の利用、印刷物の配布など、さまざまな形態で学校外の人々に活動を知ら せることは、思わぬ援助をいただいたり、第三者としての評価を得たりなど、生徒の学習世界を広げ ます。

○実際の活動では、なるべく生徒を前面に出し、事前の計画を地域でお世話になる方々に伝えさせた りするだけでなく、お礼の言葉や活動報告書などを後日持参させたりしましょう。また、研究成果発 表会に招待するなど、今後につながる活動を忘れないようにすることが大切です。地域の学校という 意識や、生徒は地域全体で育てるという意識が広く浸透していくでしょう。

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Q5−9 小・中学校との系統性・連携は?

○地元小・中学校との積極的な情報交換
 小・中学校で取り組んだ総合的な学習の時間と重ならないために、また、重なりがあっても高校で の総合的な学習の時間を効果的に実践していくために、小・中学校でどのような形態で総合的な学習 の時間を経験したか、どのようなことに興味・関心をもって取り組んだかなどについて小・中学校の 教師と情報交換をしましょう。

 小・中学校の総合的な学習の時間に関する年間指導計画を見せてもらったり、総合的な学習の時間 に関する発表会などを参観したりすることもよいでしょう。また、高校の総合的な学習の時間に関す る指導計画や発表会を小・中学校の教師に見てもらうことにより、さらに交流が深まり、総合的な学 習の時間を通じて小・中学校と高校の交流や連携を深めることが期待できます。

○高校らしい総合的な学習の時間の展開
 高校生になると、中学生の時よりも一層「どのような職業が自分に向いているのか」「どのような 大学・学部を専攻しようか」など、将来の自分の生き方についての関心が高まります。このことによ り、中学で体験した校外活動をもう一度経験してみたいと思う生徒が出てくるかもしれません。 こうした生徒は、中学時代に何気なく取り組んだ体験や活動を「自分の将来にとってどのような意味 があるのか」といった自己実現や実社会とのかかわりの観点から問い直していると言えます。このよ うに、中学で行った活動や体験をもう一度行うことが効果的な場合もあります。

 また、中学時代に比べて高校生は精神的に発達し、級友との意見の異同に関心が高まり、自己主張 への欲求も強まってきます。ディベートや討論、報告や発表などの自己表現活動を重視した指導を積 極的に取り入れたいものです。

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Q5−10 校外での活動を計画する上での留意点は?

○「はじめに校外活動ありき」の計画の見直し
 はじめに校外活動を実施する計画があって、そのために、総合的な学習の時間の実施計画を立てるも のではないと思います。まず、総合的な学習の時間の指導の展開を構想し、校外での活動の必要性が生 じてきて、立案するものです。

○従来の校外活動との関連の吟味
 遠足やキャンプ、修学旅行など、特別活動として実施してきた校外活動については、引き続き特別活 動として取り上げていくのが原則です。ただし、従来の特別活動の指導計画を再検討し、総合的な学習 の時間に位置付けたものであればよいと考えます。

 また、教科で実施してきた校外活動を導入する場合も、教科として取り上げてきた目標、内容をよく 吟味し、総合的な学習の時間に位置付けていく方がよいかどうか慎重に検討する必要があります。

○訪問先とのトラブル回避
 グループに分かれて校外の施設等を見学・訪問する時、教員が引率できない場合もあります。そのよ うな場合、トラブルを回避するするために、訪問先と連絡を密にし、身だしなみ、訪問上のマナーなど を事前に指導することが必要です。万一トラブルが起きた場合の連絡体制も整えておきましょう。ま た、事後の訪問先へのあいさつなど、失礼のないようにしたいものです。

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